百姓と農民のちがい
こんにちは。
今日も社会の話題です。
近世の百姓と農民のちがいを説明できますか?
高名な網野善彦先生などが,
中世から近世にかけての百姓身分の人々は農民だけではない、
と主張されて社会の実像を明らかにされようとなさいました。
そうしたことにふれられた
2013年の一橋大学の日本史の入試問題は少し話題になったものです。
「百姓は農民と重なる部分が多いが,近世の百姓と農民は完全に同義ではなかった。」という部分に下線が付され,
「下線部に関して,百姓と農民の重ならない点(不一致点)を2つあげて,百姓と農民の関係について説明しなさい。」
というものです。
余談ですが,おそらく一橋社会学部の渡辺尚志先生の作問だと思います。
中学教科書でも今では近世の百姓と農民を区別して記述しています。
したがって,指導の際にも区別する必要があります。
さすがに,公立高校入試レベルでは,
例えば,「兵農分離」を説明する記述問題などがよく出題されますが,
百姓と書くべきところを農民と書いても減点はされないような気がします。
百姓と農民の区別について,
例えば「帝国書院」さんの教科書にはこのように書かれています。
P96の欄外「解説 百姓」という部分の引用です。
「百姓は,農業・漁業・林業などで自給自足の生活をする農民・漁民などをさし,その多くは農業を営む農民でした。」
「自給自足」という部分は正確性を欠くように私は考えますが,
つまり,まとめるとこのようになるでしょう。
2013年の一橋大の解答も,予備校さんによっては違った視点で解答を作られていますが,以下の2点を書くのがよいのではないかと思います。
①百姓は身分を表す言葉であるが,農民は職業を表す言葉である。
②百姓身分には,職業が農民の人だけではなく,漁民や林業を営む人,商業を行う人, これらを兼業する人などが含まれている。
中学教科書の記述を拾ってみます。
先ほどと同じ,「帝国書院」さんのP96の本文からの引用です。
「豊臣秀吉は刀狩を行い,百姓が刀や槍などの武器をもつことを禁止しました。」
「武士と百姓の身分を区別する兵農分離を進め」
「農民は石高に応じた年貢を納めることになりました。」
「検地帳には,検地の結果とその土地を実際に耕作している農民が記されました。」
どこまで教えるのかは難しい問題です。
ただ,中学社会科の教科書には,こうしたより本質的な内容が増えており,
本質的なことを問う入試問題が増えていることも事実です。
では。